「世界一のクリスマスツリー騒動」と気仙沼ニッティングに見る糸井重里の本質
糸井重里、恥ずかしながら昔イトイジュウリだと思っていました。
今回のクリスマスツリー騒動とは?
今回世界一のクリスマスツリーを神戸に建てるというので、地方の山奥にひっそりと生えているあすなろの大木を引っこ抜いて神戸まで持ってきて、世界一のツリーとして飾り立て、最後にはその木材を商品にしようというもの。
これだけだとまあ、商売上手だなあと思うけれどそこまで炎上しなかったと思います。
では、今回の炎上の理由は?
今回、炎上した理由はそこに物語をつけたこと。
人知れず氷見の山奥にひっそりと自生していた落ちこぼれの木が、この瞬間に世界一輝く、夢と希望に満ちあふれた象徴の木となるのです。
木を勝手に落ちこぼれと決めつけたことや、そのシンデレラストーリーの身勝手さが炎上しました。
また、この炎上を受けて、糸井さんはTwitterでこういうツイートをしています。
冷笑的な人たちは、たのしそうな人や、元気な人、希望を持っている人を見ると、じぶんの低さのところまで引きずり降ろそうとする。じぶんは、そこまでのぼる方法を持ってないからね。
— 糸井 重里 (@itoi_shigesato) 2017年11月15日
これに対し「いや俺たち本気で怒ってるんだけど」とさらに批判が殺到しています。
糸井重里はこれまで何をビジネスにしてきたか
糸井重里といえば、一般的にはジブリのキャッチコピーやほぼ日手帳など、リベラルで物語性に満ちた、単なる商業主義とは違うおもしろいものを世に送り続けてきた人。
たとえば一時期話題になった気仙沼ニッティングでは、震災復興と過疎地での職の創出というストーリーで、地元の編み子さんたちが手縫いした一着15万円もするセーターを完売2年待ちになるまでに成功させました。
一方で、気仙沼ニッティングがモデルにしたイギリスのアランセーターには、ファッション業界では有名なインバーアランというメーカーがあります。本場のスコットランド製で職人たちのハンドメイドで価格は6万~7万。舶来の最高級品です。ファッション業界では海外ブランドを日本に輸入する際にガッツリ価格を上げることが当たり前になっているので、本国で買えばもっと安いのではないでしょうか。
つまり糸井重里のビジネスとは
インバーアランを知っている人からすれば、ほぼ2倍の値段がする気仙沼ニッティングは随分割高に思えてしまうし、よっぽどのお金持ちでない限りこの差は大きいでしょう。
じゃあ何に価値があるのか、というとやはり物語性。気仙沼ニッティングのもつ物語に、より多くのお金を払っているわけです。つまり、この物語の良し悪しが糸井重里のビジネスの生命線だと言えるでしょう。
世界一のクリスマスツリーは物語の出来が良くなかったかも
今回のクリスマスツリー、糸井重里のファンからも批判が多いようですが、その理由として自生している木をわざわざ抜いてくることはない、というのがあります。人間が植林をして大切に育ててきた木を同じようにするのなら、小学校の食と生命の教育で育てた家畜を食べるみたいに問題提起にもなったのでしょうが、今回のはわざわざしなくていいことをして、周りがそれに眉をひそめたら問題提起になって結果オーライ、と言っているように感じてしまいます。
続報あり!
やはり、移植は難しいようですね。ツリー後の伐採は未定ながら、おそらくされそうな雰囲気です。そもそも、このあすなろの木は奇跡でもなんでもなかったようで、記事中で説明される主催者の声明では、
「年間何千本という富山県の森林組合が出荷している里山のなかの一本であり、それがたまたま他の用途ではなく、今回のクリスマスツリーになった」
と炎上した挙句に物語の嘘を自ら暴いてしまっています。これはいけませんね。安感動で商売しようとしていたことを明らかにしたも同然。これでは残念ながら問題提起ではなくて、炎上商法に見えてしまいます。
そもそも、社会的な問題提起なんて、それこそ凶悪犯罪者だってできます。こんなの言ったモン勝ちの世界。
大事なのはその方法なんですよ。聴衆の納得がいかなれけば、提起する側の問題に目がいってしまい、問題提起としては失敗です。